HAUS | Hokkaido Artists Union studies

ポケット企画と伴走リポート#2

若手舞台人が語る悩み
「U-29でつながろうぜ!」を見学しました

2023.4.10
text 渡辺たけし(HAUS)

若手舞台人が企画した、あるようでなかったイベント

「ここらで交流会しませんか?ーU-29でつながろうぜ!ー」というイベントが、2023年4月8日(土)あけぼのアート&コミュニティセンターで行われました。この交流会は、ポケット企画(札幌市)三瓶竜大さんと弦巻楽団(札幌市)佐久間泉真さんが企画したものです。29歳以下の舞台関係者を集めて、自分たちが普段考えていることや困っていることなどを、ザックバランに話してみようというディスカッションのイベントです。

ハウスサバイバルアワードで三瓶さんがプレゼンした企画ということもあり、HAUSからも2名「取材見学」ということで参加させてもらいました。はらをわって話しやすいように年齢を限定している企画です。ちなみにぼくは51歳。軽く年齢の基準を超えているため「ぼくらが部屋にいることで、話しづらい雰囲気になってしまうのではないかな」と慎重になりつつ、若干緊張気味に見学させてもらいました。

話される困りごとに、世代間の違いはあるのか?

ぼくが訪れたのは14時くらいから1時間。三瓶さん、佐久間さんの他に5人ほどが参加。ポケット企画、弦巻楽団の劇団関係者の他にも「SNSなどで情報を見て参加した」という人も多数きていました。トピックは様々でしたが、10代や20代が直面する生身の疑問や悩みが話されていました。5月に行われる企画のプレイベントだったにもかかわらず、夕方まで開催された集まりには、のべ10人以上の人たちが参加したそうです。

「どうやったら舞台の仕事で収入を得ることができるのだろう」
「夜に勤務のある仕事をしながら演劇を続けるにはどうしたらいいのだろう」
「とにかく札幌の若手舞台人とつながりたい」
「公演資金を捻出するにはどうしたらいいのだろう」

確かに20代の皆さんにとって切実な話題ばかりです。しかし、おそらくそれは若い方だけではなく、これはどの世代でも尽きない悩みでもあります。話していても解決するわけではないのですが、同世代の仲間と共有するだけで前向きになれるのかもしれません。ぼくは、20歳以上(フタムカシというのかな?)年齢が離れているわけなのですが、参加者皆さんの切実さと真剣さに襟が正されました。

「世代」という言葉があります。今日集まった皆さんはいわゆる「Z世代」。それに対してぼくら1970年代生まれは「団塊ジュニア世代」なんて呼ばれていました。「ジュニア」とつけられると、なんだか添え物感があり、あまり居心地がよくありません。もしかすると、どの世代の皆さんも一括りにされるのは嬉しい話ではないかもしれません。しかし、こんなふうに、同じ年代の舞台人が世の山話をしながら出会う機会は、ぼくらが20代の頃にはなかったように思います。こういう企画を発案する20代に、ぼく自身勝手な頼もしさを感じます。

本イベント「若手のための意見交流会」にも期待です

それから、今回の話の中でも少し触れられていましたが、ポケット企画がとても配慮しながら提示している「ハラスメントのガイドライン」も、ぼくらの年代では考えられなかったことです。舞台芸術の稽古場こそ「ハラスメント行為があってナンボ」みたいなところがあり、ぼく自身もハラスメント行為自体に無自覚だったと振り返ります。もちろん、創作現場における意見の相違や考え方の違いがあるのは当たり前です。しかし、それが「健全な対立」だったかというと自信がありません。*1劇団「地点」のハラスメント問題や、続発する訴訟案件を見ていると、舞台芸術の世界は、集団の在り方や見方をアップデートしなければならないと感じてます。

その反面、「ガイドライン」がたくさんなければ成立しないという創作環境にも、少しだけ違和感を感じてしまいます。ぼく自身が持っているこの違和感について「いろんな年齢、地域、立場、職種の皆さんとお話する機会をHAUSでも作れないかな」と個人的には考えています。何はともあれ、ポケット企画、三瓶さん、佐久間さんの活動には、大きな意義を感じます。今回の企画はプレイベントでした。5月3日に、本企画である「若手のための意見交流会」が開催されます。たくさんの人たちが思いを語れる集まりになるといいなぁと願っています。これからも、最大限で応援したいです。

「若手のための意見交流会」の詳細はこちら

余談になるのですが。

1時間ほどの参加後、あけぼのアート&コミュニティセンターを出ようとしたところ、愛車のエンジンがかかりません。いろいろ調べてもらったところ、エンジンモーターの不具合ということで、整備工場がレッカーにきてくれました。中古車ならではの部品不良ということで、修理完了まで10日以上かかってしまいした。

まぁ、こんな日もありますよね。

*1京都の劇団「地点」の主宰・三浦基氏による元劇団員へのパワーハラスメントを巡る問題

ポケット企画
2021年まで三瓶竜大(劇団清水企画)のソロユニットでしたが、団体化が決まり、現在までに三瓶竜大・佐藤智子・吉田侑樹・藤川駿佑・さいとうあすか・泰地輝・森大輝の7人が所属しています。 毎週木曜日の定期稽古のほか、戯曲を読む会、事前批評会、ダンスレッスンなどをメンバー全員で企画、運営。他団体の俳優との勉強会や月に一度の観劇会なども精力的に行っています。“今”しかできない表現を大切に、文化全体の反映を願いながら日々創作活動に励んでいます。