HAUS | Hokkaido Artists Union studies

米沢春花さんと伴走#4

函館で演劇を作る2日間
時間を共有して
同じ釜の飯を食う

2023.3.15
text 渡辺たけし(HAUS)

サバイバルアワードに参加してくれた米沢春花さんの企画「演劇のことだけを考える2日間」が、2月26日(土)、27日(日)の両日、函館市で行われました。

過去の記事は、こちらです。

「演劇のことだけを考える2日間」ZOOM打ち合わせしました。

米沢春花さんと「演劇のことだけを考える2日間」というイベント企画を練る

「同じ釜の飯」「子連れ歓迎」
こんなワークショップでした

会場は、函館にある古民家を改装したゲストハウス「大正館」。参加者は全部で15人。札幌、函館、稚内など道内だけにとどまらず、青森県、宮城県など道外からの参加もありました。

コロナ禍で、人が集まりづらくなっていた昨今ですが、同じ釜の飯を食いながら、お芝居作りのワークショップを行うというのが今回のメインコンセプトです。米沢さんは、HAUSサバイバルアワードの賞金をこのワークショップ運営の一部に使ってくれました。

この呼びかけに賛同した15人が函館に集結。2グループに分かれて「ただいま」というテーマで、2日間演劇作りを行いました。

子育てと演劇

今回のワークショップのもう一つの特徴は、子連れ参加がOKということでした。HAUSメンバーも託児要員として参加。この記事を書いているわたし(渡辺)も、なれない託児を行った訳ですが、泣いている子どもたちをあやそうと努力しても簡単には行かず、逆に涙目となっていました。

子連れで参加者の中には
「最初は、子どもを連れてきたことで、周りにも、子どもにも負担をかけている気持ちになり、参加したことを後悔した。でも、後になって考えると、子ども自身も新しい体験ができて成長につながった気がする」
という感想を話してくれた人もいました。

子どもを連れて参加できる表現活動は少ないのが現状です。今回のワークショップの形式が今後共有され、子育て世代も作品作りや学習ができる場が増えていけばいいなと願っています。

「ただいま」と日本語と方言

今回のワークショップの、もう一つの大きな特徴は、参加者がさまざまな場所から集まっているということです。普段の生活環境も違う上に、芝居づくりの方法も様々です。今回は作品を作る方法の共有からスタートしました。さらに、地域ごとの言葉の違いにも話題となり、自然と札幌、函館、東北の方言が作品づくりのなかに盛り込まれました。

また、スペイン語が公用語であるエクアドル出身の参加者もおり、演劇作りの一つのテーマとして「言語」が立ち上がったことも興味深かったです。スペイン語には「ただいま」にあたる言葉がないのだそうです。言語がもつ、そもそもの成り立ちや、社会性に寄り添えたことも面白い点でした。 

人とつながること=同じ釜の飯を食う

主催した米沢さんが最初からこだわったのは「同じ釜の飯を食う」ということでした。まだ、コロナ感染予防対策は怠れないものの、仲間と飯を食い、宿泊し、額を寄せ合い話しながら作品作りに向かう。そんな当たり前のことの重要性を再確認する場となりました。

2日間を終えた参加者はさまざまな思いを持ちながら帰路についたようで、前向きな感想を多くもらいました。

「育ちも環境も違うほぼ初めましての演劇人と、土日の二日間でオリジナル演劇を創作し発表するという経験はとても刺激的でしたし、これから道南を中心に演劇やイベントを開催するという心のスイッチを切り替える為にはとても有意義な時間でした。」

「ただ集まって話をするだけでは到達できない、身体的応答を含んだ関係の深まり。普段は舞台を一緒に作る事でそんな関係を作り上げるのだけれど、合宿という方法もアリなんですね。青森でもやりたいな〜。」

今回HAUSはファシリテーターとして参加

今回の企画で、HAUSのオーダーされたことの一つは「ファシリテーターをしてもらえないか」という内容でした。作品作りが硬直しないよう、ワークショップを俯瞰する視線で参加し、2日間一緒に皆さんと時間をすごしました。

ぼくらは中間支援をする立場なのにもかかわらず、「ファシリテーターなどのように、作品作りの内部に入り込むことは是か否か?」という論議が、HAUS内でもありました。

もしかすると、HAUSが、企画運営の人たちとファシリテーターに適任な人をつなぐ・・・というほうがベストだったのかもしれません。思い返すと、反省点は尽きないところ。まだまだ、ぼくらの組織には未熟な部分もあることは否めません。

ぼくたち自身も支援活動は未だ手探りなのですが、今後も迷いながら、人と人とが出会える場所を作る支援を続けていきたいと考えています。

米沢春花
脚本・演出・舞台装置・舞台監督。札幌生まれ。高校の頃から舞台に関わり、主に舞台装置作りなどを始める。2010年劇団fireworksを旗揚げ。以降、劇団の本公演全ての脚本・演出を手がける。