HAUS | Hokkaido Artists Union studies

サバイバルアワード

HAUS studies vol2
「アーティストと、ギャラと、
働くことと、生活と。」
を開催しました

2023.2.22
text 戸島由浦(HAUS)

アーカイブ映像

1月22日(日)、HAUS studies vol2/「アーティストと、ギャラと、働くことと、生活と。」を開催しました。
契約や話し合いの切り出し方、本番前に確認しておくべきこと、幅広く教えていただきました。

アドバイザーとして来ていただいた弁護士の田島佑規さんは、2月末に札幌で開催される、onpamによる「関係づくりを学ぶ!現場で使える契約講座」にも講師としていらっしゃいます。

俳優のリンノスケさんがHAUSに相談してくれたことから始まったこの勉強会。契約というと耳障りが固いですが、企画を制作するときに、依頼側も出演側も、互いの認識を対話の中で確認しておくことが大事ということだと思います。立場の違う者同士がどんな話し合いをできるかということについても、参加者の実際の経験を元に話しました。

◆目次◆


00:01:40
アーティスト支援事業、ハウスサバイバルアワードの仕組み

00:02:22
アーティストからの相談を聞いたことがこの勉強会の始まり 
※アーカイブは出演者の了承を得て公開しています。

00:02:33 
相談者 リンノスケさん 自己紹介

00:04:00 
弁護士 田島佑規さん 自己紹介

00:08:13 
インフォメーション

00:12:25 
HAUSメンバー自己紹介(櫻井ヒロ 羊屋白玉 箱崎慈華 戸島由浦 渡辺たけし 奥村圭二郎)

00:15:15 
本題「出演依頼受けてもギャラを伝えられないことが多いし、自分から聞きずらい」(櫻井)

00:14:17 
ハウスがサバイバルアワードのアーティストと交わしている覚書について(羊屋、戸島)

00:21:30 アーティスト契約書を作ってゆこうという気運が立ち上がっていった世の中の流れなど(戸島)

00:23:21 
田島さんが考える契約書を作って良い環境にしてゆこうという気運のきっかけ 
①コロナで上演がキャンセルになった時、それまでの経費どっちが払う? 契約書があったら話し合いができたのに、、、 
②主催者側からは、世界的に上演配信が広がったときに、日本の現場では、配信に対する契約関係が作られていなかったため、遅れをとった。
③芸術分野のハラスメント問題への対策 
④フリーランス保護法 ⑥文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン 
しかし、契約書が作られても、アーティスト側には不利かもしれない場合、一つ一つ読み込んでゆかないといけない。

00:29:46  
田島さんへの質問タイムに入ります。
Q1.サブタイトルにもある「契約とは対話」とは誰と誰のどんな対話なんでしょうか?
A1.対話によって、お互いの落とし所を見つけるため。とはいえ、両者ハッピーとは限らない。バランスが大事である。そのためにも対話が必要。

00:32:40 
Q2.プロジェクトや企画が始まろうとしている時に、遅くともここまでに契約書を交わすべき、そのデッドラインはいつなんでしょう?
A2. 理想としては、企画が始まろうとしている時に、契約内容の会話が始まっているべきです。間に合わない場合は、契約書の内容を決めてゆくスケジュールを立てる。今決められない内容は、いつ頃までに決めるのか、など。

00:34:21 
契約に関する悲しい事例オンパレードなど
Q3. ノーギャラも契約は成立するんですか?
A3. 合意があれば原則成立。契約はギャラのこのだけではないし、権利関係の契約もある。契約書はよく読んで、内容を納得してからサインをすること。家に持ち帰って読んできますと言っても良い。

00:40:00 
出演者だけど契約書を作ってみた(櫻井)
主催者側は今まで一度も、出演者たちと契約書などを交わしたことがなかったので、出演者の一人である自分が、何を主張して良いかわからなかったけど、他の出演者の聞き取りをしながら、主催者側との契約書を作ってゆこうと思った。契約書作りのやりとりはまだ続いている。舞台初日は2月4日、本日1月19日。
00:50:00 リンノスケさんの実感や気づき
大学生の頃から、表現活動をしてきたけど、今は自分の生活のこともあるし、契約書を作らなければと思った。でも、今まで付き合いのある方達に改めて契約書の話はしにくい。制作側と仲良くならない方がいいのかなと思う時もある。

00:54:45 
Q4. 契約の話の切り出し方って、難しいです。
A4.言いにくい時は人のせいにする。確定申告があるとか。勉強会とかに参加したら、弁護士さんが契約書は必要ですと言っていたから、とか。HAUSがうるさいから、とかでもいい。最終的には、切実に伝えてゆく心づもりも必要。
00:57:35 
Q5. 契約に記載するとよい項目はなんでしょうか?
A5.文化庁のガイドラインが参考になる。ひな形が役に立つ。自分の場合にふさわしい雛形を選ぶこと。チェック項目として役に立つ。

◆文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインの概要
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/93744101_02.pdf

◆ひな形は31ページから
http://onpam.net/wp-content/uploads/2023/02/on-pam_keiyakuguidebook.pdf

01:01:24
これらは元々ある労基法から文化芸術用にカスタマイズしてる。具体的にアーティスト用にカスタマイズしたいから、ハウスもワークルールも勉強したいなと思っている。(羊屋)

01:02:11 
そろそろ後半、契約書を具体的にどう作るべきか。


onpamによる「関係づくりを学ぶ!現場で使える契約講座」開催 ぜひお越しを
札幌会場 2023年2月28日(火)北海道教育大学札幌駅前サテライト
時間:19時~21時 
定員:各回40名(先着順)
受講料:無料
申し込み:https://sites.google.com/onpam.net/keiyaku/

01:04:57 
Q6. 契約書を自分で作るときは何から始めるのが良いのでしょう?
A6.自分にとって納得のゆく内容が一番良い。そして専門家に見てもらう。専門家に相談するとお金はかかるので、取引としての見積書がおすすめ。自分にとって、発注者に守って欲しい内容、条件を箇条書きにしてメモに残しておく。簡易バージョンでもいい。そして、その見積書にサインをもらう。

01:11:42 
事前にきている質問で多かったもの。
Q7.ギャラ交渉の前に、そもそも自分の適正な価格がわからない。
A7.ワンステージいくらとか相場で決めることができる。著作権に絡む配信の二次利用の相場は今作っている。兼業に関しては、社会的意味として、兼業だからといって安く受けすぎると、他のフルタイムアーティストの人たちに迷惑になる。広く業界の人たちのためにも基準を作っているのがいいと思う。自分にも相手にも社会にもいいラインを見つけてゆかなくては。

01:17:00
予算を聞かせてもらって、自分のギャラはそのうちの何%払って欲しいと交渉する時もある(羊屋)

01:19:42 
兼業アーティストですけど、もう一つの仕事の方を補填できるかどうかも目安で。とはいえ言い出しにくい。脳内契約書で色々予測する。(櫻井)
札幌は、ワンステージ1万円かな。参加費みたいなチケット何枚買取ですってのもある。(リンノスケさん)興行リスクまで出演者側が負わされてしまうのはひどい。(田島さん)

01:23:40 
ある美術家から
契約書を交わすことはほとんどない。口約束が多い。メールの時もある。ギャラは仕事の依頼が来た時に、決まっていたり決まっていなかったり。先方に交渉するのはハードルが高いです。など。
約束されたギャラが支払われない問題。弁護士料とか考えると費用倒れになる。メールや紙で残す。悩ましいです。日本美術家連盟。イラストレーター連盟。に相談する。(田島さん)

01:29:30 
あるクラシックの音楽家から。
契約の文面も残していたのだけど、表沙汰にすると業界に干されてしまうリスクを考えると怖い。 

01:30:36 
あるミュージシャンからの感想
クラシックは確立された世界。自分の師匠の人脈などでキャリアも決まる。パワーバランスなど独特の業界。風穴を開けてゆくのは難しい。
01:33:01 
ある俳優から
Q8.知り合いの人からこのCMナレーションの話があるけど、ギャラこれくらいだけど、って紹介がありました。もうちょっとギャラあげてくださいって言いたい場合は、誰との契約になりますか?
A8. お金が事務所側から出るのなら事務所と話をする。場合によっては、三者間で話す場合もある。契約のポイントは、契約の相手は誰なのか?誰との契約なのか?を確認すること。

01:39:00 
先ほどのあるミュージシャンからの事務所中抜き事件
20年くらい前、いわゆるモンキービジネスでしたが、事務所が間に入る場合は、元の値段を知ることはタブーでした。でも、元がいくらか教えてもらえたことがあって、その時は、事務所から僕に払われたのは3万で、元は60万だった! 

01:42:35 
公務員労働組合を経て(渡辺たけし)
Q9.労働組合をやってきた頃は、集まって何かを要求するってことはしてきたんだけど、
アーティストたちの場合、事業主の場合も多いし、どういう集まり方の形態が良いのか、どうお考えですか?
A9.文化芸術の業界団体で同じ職能で集まって要求していることはありますね 劇作家協会とか 団体名義で出してゆくってことはある
ハウスがそういうことを肩代わりできるんでしょうか?(渡辺)

個人的には、むしろハウスがそういうことをすることが社会的な役割として期待されているのでは? アーティストからギャラの話をしたらダメなんじゃないかとか、言い出せない孤独感があると思うんですけど、そんなことないよって言える、「対話」をしてゆく、北海道内での空気づくり、風土を作ってゆくことがハウスができると良いですね。(田島さん)

発注する立場になる場合もある 発注する側も孤独 興行リスクもあるし、そういうのをどう汲み取るか、そういう話ができるところもあるといい。(渡辺)

01:52:45
札幌での2/28のonpam講座は、スタッフや出演者に仕事を発注するときの、いずれの立場にも双方向な、模擬交渉的なワークショップです。

01:54:24 
先ほどの、あるミュージシャンから、「お金をもらって作品を作るのは良いこと」って話。

お金もらわないでも作ってた時もあったけど、お金をもらうようになってからクオリティが変わってきてるんです、確実に。お金をもらうようになってから、曲を作り、演奏し、録音し、世間に出してゆくように変わっていった。その変化は、人との繋がりもできるし、社会的なことでもあるし。お金が儲かるからいいんじゃなくて、人が稼いだものが僕に支払われる。これは、いいことだと思う。

◆勉強会概要◆

HAUS studies vol.2「アーティストと、ギャラと、働くことと、生活と。」~契約とは、対話なのです~
主催:リンノスケ(俳優) × Hokkaido Artists Union Studies
助成:令和4年度札幌市文化芸術創造活動支援事業

公演が決まったけれど、いくらもらえるか分からず、
あえて突っ込もうとも思わない。
展示が決まったけれど、制作費も交通費もないぞ。
契約書、ありがたいような気がするけれど、内容はよく分からない。
確定申告って、インボイスってなんなのだ。
あの作品を使いたいけれども誰にご相談すればよいのか。
疑問はつきません。
今回は、弁護士の田島佑規さんをお迎えし、
活動にまつわる実際のトラブル事例やその対策を取り上げながら、
北海道のアート活動において出演交渉等にどう向き合っていくべきか、
依頼される側、する側それぞれの立場を踏まえながら考えてゆきます。
些細なことでも、ワークルールに関するお悩みあれば、ぜひご参加を。オールジャンルのアーティスト、マネージャー、デザイナー、お待ちしております。

アドバイザー:田島佑規(たじまゆうき)
「骨塩通り法律事務所」弁護士。その他、文化庁EPAD事菜 権利処理チーフ、緊急事態舞台芸術ネットワーク車務高、京都大学法科大学、芸術文化製光市門職大学 非常野菜市等を務め、アー下、満時、映像、出版、音楽などの分野にて法務サポートを行う。2019年より、「デザイナー法)小他の企画・運営を行っている。

聞き手:リンノスケ
俳優。北海道出身。
札幌市立大学デザイン学部卒。在学時の2015年より俳優・舞踏を始め、2016年に旗揚げしたきっとろんどんを共同主宰。
また劇団千年王國に出演した際は「贋作者」では鴈次郎役、「ロミオとジュリエット」ではロミオ役でそれぞれ主演を演じた他、micell、モノクロームサーカス、東野祥子、伊藤千枝、田仲ハル、Sapporo Dance Collectiveなどのダンス・舞踏作品にも出演。
2022年からは活動拠点を東京と北海道の2拠点に広げた。